~「今」を楽しみながら「未来」に備えるために~
社会人になって初めて給料を手にしたときの喜びは、誰にとっても特別なものである。
「自分の力で初めて稼いだお金」という実感と、「好きなことに使える」という自由。
その両方を味わった読者も多いことだろう。
しかし、給料の使い方次第で、5年後、10年後の人生のかたちは大きく変わる。
本コラムでは、若手社会人に向けて、「お金との向き合い方」を考察したい。
~自由と責任は表裏一体である~
初任給を手にしたとき、「何に使おうか」と胸を躍らせた人も多いはずである。
美味しい食事、憧れていたファッションアイテム、
あるいは親への贈り物——どれも素晴らしい選択である。
だが、その裏には大切な前提がある。すなわち「お金は自己責任で管理するもの」であるということだ。
学生時代は、親や周囲の支援によって生活が成り立っていたが、社会人になると、
収入も支出もすべて自分の管理下に置かれる。
極端な話、給料をすべて使い切っても誰からも注意されることはない。
だからこそ、「収支の把握」という基本的な習慣を持つことが第一歩となる。
自由を手にした今こそ、責任ある使い方を意識すべきである。
「貯金」と「自己投資」は未来の自分への贈り物である
貯金という言葉に対して、「余裕が出てから考えればいい」と思う人もいるだろう。
しかし、たとえ1万円でも、毎月コツコツと貯金を積み重ねていくことが、将来の安心感を生む。
重要なのは金額ではなく、「お金を先に取り分ける」という習慣である。
先に取り分けてしまえば、残ったお金で生活するという発想が身につき、自然と貯まっていくようになる。
そしてもうひとつ注目すべきは、「自己投資」である。
旅行、資格取得、読書、セミナー参加など、自分の視野を広げ、成長のきっかけとなるような経験にお金を使うことは、未来に大きなリターンをもたらす。筆者自身、特に30代は積極的にセミナーや異業種交流会に参加し、
そこでの出会いが、その後のキャリアに大きな影響を与えてくれた。
「これは将来の自分にとって価値があるか?」——その視点で判断すれば、浪費と投資の違いが見えてくる。
~投資を始める前に、「在りたい自分」を明確にする~
最近は若年層の間でも金融投資への関心が高まっている。
新NISAやiDeCoといった制度が整備され、少額から始められる点も後押しとなっている。
しかし、投資にはリスクがあることを忘れてはならない。
生活資金や緊急予備費が確保されていない状態での投資は、かえって不安定さを生む可能性もある。
まずは生活の土台を整えること、そして自己投資や貯金をバランスよく行うことが先決であると考える。
そのうえで投資をする場合、「なぜ投資をするのか」という目的を明確にし、無理なく始めていくことが大事である。
そして何より大切なのが、「自分は5年後、10年後にどう在りたいか」という問いである。
このビジョンを持つことで、日々のお金の使い方にも一貫性と納得感が生まれる。
まとめ:お金の使い方は、生き方そのものである
お金は単なるツールであり、それ自体に良し悪しはない。だが、その使い方には、
その人の価値観や生き方が如実に表れる。
今を楽しむことも大切である。だがそれと同時に、「未来の自分」に責任を持つ視点も必要だ。
社会人としての第一歩を踏み出した今、この給料は「人生のハンドル」を自分で握った証でもある。
その手で、どんな人生をデザインするのか——それを決めるのは、他でもない自分自身である。